同等性

肖像作家の才能とは、同一性(identity)ではなく同等性(sameness)によって写真を撮ることである。同一性(アイデンティティ)の「同じ」が主語に関わる(「私」は「私」であって「あなた」ではない!)とすれば、同等性(セイムネス)の「同じ」は、述語に関わる。裸になれば「同じ」、病気になれば「同じ」、死ぬときには「同じ」、あなたは私と「同じ」だ、と。同一性の写真は、個人のアイデンティティを確定し、尊重する友情とオネスティの写真であり、輪郭=全体像を保全する写真である。同等性の写真は、アイデンティティにお構いなく述語や動詞が「同じ」である事を通じて、相手を自分と「同じ」存在として見つめる。それは正体ではなく、正面に反応する、愛とユーモアの写真である。当然、アイデンティティに囚われた意識にとっては、不快で、タブー侵犯的でもあるが、「肖像」の魅力はそこに由来する。

清水穣 – 54:「沖縄」と「肖像」 — 石川竜一の『Okinawan Portraits 2010-2012』 – ART iT